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カナダの雇用政策と多様性促進の取り組み

カナダの雇用政策の特徴と、多様性と包摂性を重視した取り組みについて解説します。連邦政府の雇用均等法、先住民雇用戦略、移民統合政策、そして企業の多様性推進事例を紹介します。

カナダの雇用政策と多様性促進の取り組み

1. カナダの雇用政策の概要

カナダは、多様性と包摂性( ダイバーシティ&インクルージョン)を 重視した雇用政策を推進しています。 これは、カナダが多文化主義を 国家の基本理念の一つとして 掲げていることと深く関係しています。

カナダの雇用政策の主な特徴は、 以下の3点です。

  1. 連邦政府による雇用均等法: 女性、先住民、障がい者、 可視的マイノリティ(人種的少数者) の4つの指定グループの雇用機会均等を 促進するための法律
  2. 積極的な移民受け入れ政策: 高度なスキルを持つ移民や 起業家を積極的に受け入れ、 経済成長と労働力不足の解消を図る
  3. 多様性と包摂性を重視した企業文化の醸成: 政府、企業、労働組合、 教育機関などが連携し、 多様な人材が活躍できる 職場環境づくりを推進

2. 雇用均等法(Employment Equity Act)

雇用均等法は、1986年に制定され、 1995年に改正されました。 この法律は、連邦政府の規制下にある 民間企業(従業員100人以上)や 連邦政府機関に対して、 以下の4つの指定グループの 雇用状況を改善するための 措置を義務付けています。

  • 女性(Women)
  • 先住民(Aboriginal peoples)
  • 障がい者(Persons with disabilities)
  • 可視的マイノリティ (Members of visible minorities)

雇用均等法に基づく具体的な措置:

  • 雇用状況の分析(Workforce analysis): 各指定グループの従業員数や 職種、賃金などを把握
  • 雇用均等計画の策定(Employment equity plan): 数値目標や具体的な取り組みを 含む計画を作成
  • 計画の実施と進捗状況の報告 (Implementation and reporting): 計画を実行し、定期的に 政府に報告

雇用均等法は、 単なる差別の禁止にとどまらず、 積極的に格差を是正するための 措置を求める 「アファーマティブ・アクション」 (積極的差別是正措置)の 考え方に基づいています。

3. 先住民雇用戦略

カナダ政府は、先住民の雇用促進を 重要な政策課題の一つとして 位置づけています。 先住民は、他のカナダ人に比べて 失業率が高く、 所得水準が低い傾向にあるためです。

先住民雇用戦略の主な取り組み:

  • 先住民技能雇用訓練戦略 (Aboriginal Skills and Employment Training Strategy): 先住民のスキルアップや 職業訓練を支援
  • 先住民若年者雇用戦略 (First Nations and Inuit Youth Employment Strategy): 先住民の若者の就業支援
  • 先住民企業支援プログラム (Procurement Strategy for Aboriginal Business): 先住民企業の政府調達への 参加を促進
  • 先住民コミュニティとの連携 (Partnerships with Indigenous communities): 雇用創出や経済開発に関する 協力関係を構築

これらの取り組みは、 先住民の経済的自立を支援し、 カナダ社会への包摂を 促進することを目的としています。

4. 移民統合政策

カナダは、世界でも有数の 移民受け入れ国であり、 移民はカナダの労働力人口の 重要な部分を占めています。 カナダ政府は、移民が カナダ社会にスムーズに 統合できるよう、 さまざまな支援策を 提供しています。

移民統合政策の主な取り組み:

  • 言語訓練(Language training): 英語またはフランス語の 語学研修を提供
  • 雇用支援(Employment assistance): 求職活動のサポート、 カナダの労働市場に関する情報提供、 資格認定の支援など
  • 定住支援(Settlement services): 住居、教育、医療など、 生活に必要な情報や サービスを提供
  • 多文化主義政策(Multiculturalism policy): 移民の文化的背景を尊重し、 多様性を社会の強みとする ための取り組み

これらの取り組みは、 移民がカナダ社会の一員として 活躍できるよう支援し、 多文化共生社会の実現を 目指しています。

5. 企業の多様性推進事例

カナダの多くの企業が、 多様性と包摂性を重視した 経営戦略を推進しています。 これらの企業は、 多様な人材が活躍できる 職場環境づくりが、 企業の競争力強化に つながると考えています。

企業の多様性推進の具体例:

  • RBC(Royal Bank of Canada): 多様性&インクルージョンを 経営戦略の中核に据え、 女性、先住民、障がい者、 LGBTQ+など、さまざまな グループの従業員の採用、 育成、昇進を支援
  • TD Bank Group: 「インクルーシブなリーダーシップ」 の育成に力を入れ、 多様なチームを 効果的にマネジメントできる 管理職の育成に取り組む
  • Accenture Canada: 「Skills to Succeed」プログラムを 通じて、若者、女性、 先住民、移民など、 さまざまなグループの 就業支援を行っている

これらの企業は、 多様性推進の取り組みを 積極的に情報公開しており、 他の企業の模範となっています。 カナダでは、政府、企業、 労働組合、教育機関などが連携し、 多様性と包摂性を重視した 社会づくりが進められています。