日本の女性労働は、時代とともに大きく変化してきました。 戦前は「家事使用人」や「農業従事者」が 大半を占めていましたが、 高度経済成長期には「事務員」や「販売員」 などの第三次産業への従事が増加しました。

1986年の男女雇用機会均等法施行により、 女性の職場進出が進みましたが、 「一般職」と「総合職」という コース別雇用管理制度が導入され、 女性の多くは「一般職」に 配置される傾向が続きました。

1990年代以降、バブル崩壊後の 経済停滞や非正規雇用の増加により、 女性の労働環境は不安定化しました。 また、「M字カーブ」と呼ばれる、 出産・育児期に女性の労働力率が 低下する現象も、 日本社会の課題として 長く認識されてきました。

男女雇用機会均等法は、 募集・採用、配置・昇進、 教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇 などにおける男女差別を禁止しています。 しかし、間接差別（一見中立に見えても、 結果的に一方の性に不利益となる措置） の問題や、セクシュアルハラスメントの 問題など、課題も残されています。

2016年には女性活躍推進法が施行され、 企業に対して女性の活躍状況の把握、 課題分析、行動計画の策定・公表が 義務付けられました。 これにより、女性管理職の登用や、 長時間労働の是正など、 企業における取り組みが進むことが 期待されています。

また、育児・介護休業法や 次世代育成支援対策推進法など、 仕事と家庭の両立支援に関する 法制度も整備されてきました。 しかし、これらの制度の利用率は 必ずしも高くなく、 実効性の向上が課題となっています。

日本の女性労働者が直面する 最大の障壁の一つは、 「アンコンシャス・バイアス」 （無意識の偏見）です。 これは、性別役割分担意識や、 「女性は管理職に向かない」 といった固定観念に基づくもので、 採用、評価、昇進などの場面で 女性に不利に働くことがあります。

また、「ガラスの天井」と呼ばれる、 女性の昇進を阻む見えない障壁も 存在します。 これは、企業文化や組織風土、 長時間労働を前提とした働き方、 男性中心のネットワークなど、 さまざまな要因によって 形成されています。

さらに、非正規雇用の問題も深刻です。 女性労働者の約半数は非正規雇用であり、 賃金格差、雇用の不安定性、 キャリア形成の困難さなど、 多くの課題を抱えています。 特に、シングルマザーの貧困は、 社会問題となっています。

近年、政府主導で進められている 「働き方改革」は、 女性のキャリアに 大きな影響を与える可能性があります。 長時間労働の是正、 同一労働同一賃金の実現、 柔軟な働き方の推進などは、 女性の働きやすさを向上させ、 キャリアアップの機会を 拡大することが期待されます。

特に、テレワークや フレックスタイム制などの 柔軟な働き方は、 育児や介護と仕事の両立を 支援する上で有効です。 また、副業・兼業の推進は、 女性の多様なキャリア形成を 後押しする可能性があります。

しかし、働き方改革が 女性の活躍推進に つながるかどうかは、 企業の取り組み次第です。 制度の導入だけでなく、 企業文化や意識改革、 管理職のマネジメント能力向上など、 総合的な取り組みが求められます。

日本の女性労働の未来は、 社会全体の変化と 密接に関連しています。 少子高齢化が進み、 労働力不足が深刻化する中で、 女性の活躍は 日本経済の持続的成長に 不可欠です。

そのためには、 女性が働きやすい環境整備、 アンコンシャス・バイアスの解消、 女性リーダーの育成、 多様な働き方の推進など、 多岐にわたる取り組みが 必要です。

また、女性自身の意識改革も 重要です。 キャリアアップへの意欲、 自己啓発への取り組み、 ネットワークの構築など、 自らのキャリアを 主体的に切り開いていく 姿勢が求められます。

女性の活躍は、 企業や社会に 多様性と活力をもたらし、 イノベーションを促進します。 女性がその能力を 最大限に発揮できる社会の実現は、 日本全体の発展に つながるでしょう。